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面従腹背

 昨日は前川喜平著「面従腹背」を一気に読み終えました。本の大部分は文部官僚だった前川喜平氏の39年間の仕事について書かれています。その仕事にはやりたくてやったこともありますが、やりたくなかった仕事もたくさんあり、面従腹背でせざる得なかった苦渋に満ちた仕事が多くありました。例えば、教育基本法の改正、教員の免許更新制度、道徳教育の教科化等々です。それらは教育現場の必要からではなく、政治権力の側が支配を強めるためになされた仕事だったからです。

 私は不器用な人間で、「面従腹背」というより「面背腹背」の教員生活を送ったのではないか、特に若い頃はしばしば管理職に逆らったことがありました。それでも教員として生きることが出来た時代だったように思いますが、今の時代なら、とてもそんなことは出来ないでしょう。前川喜平氏なら「教員としての仕事を続けたかったら面従腹背しなさい」と言うでしょう。


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 「面従腹背」を読み、私は道徳の教科書に載っている「星野くんの二塁打」という教材のことが頭に浮かびました。
 この教材をどのように面従腹背して子どもに指導するか‥‥。

 『星野君の二塁打』のあらすじ

 バッターボックスに立った星野君に、監督が出したのはバントのサイン。しかし、打てそうな予感がして反射的にバットを振り、打球は伸びて二塁打となる。この一打がチームの勝利に導き、選手権大会の出場を決めた。だが翌日、監督は選手を集めて重々しい口調で語り始める。チームの作戦として決めたことは絶対に守ってほしいという監督と選手間の約束を持ち出し、みんなの前で星野君の行動を咎める。「いくら結果がよかったといって、約束を破ったことには変わりないんだ」「ぎせいの精神の分からない人間は、社会へ出たって、社会をよくすることなんか、とてもできないんだよ」などと語り、星野君の大会への出場禁止を告げるシーンが展開する。

 前川喜平氏は、「考え、議論する道徳」を奨励し、「迷いや葛藤を大切にした展開」「批判的な見方を含めた展開」をし、価値観を一方的に教え込む授業展開にならないようにすることを求めています。
 この教材では、監督や上司の命令は絶対で、国家の方針には絶対従うという国家主義の価値観を教え込むことになりかねないのですが、星野君の判断が一方的に間違っていると考えていいのかという問題があります。最近、日大のアメフト部の監督が「タックルで相手を潰してしまえ」という命令を出し、選手が相手に反則タックルを仕掛けてて怪我をさせた事件がありましたが、監督や上司や国も方針を間違えることがあります。
 もちろん、監督の命令に従わなくてもいいとなれば、それはアナーキズムとなり、これも大きな問題です。国家主義とか個人主義の弊害を議論し、どうすればよいかを考え、結論は子ども個人に任せて、これからの新しい社会をつくるのは君たちだという授業をすれば、政治権力に対する立派な面従腹背になるのではないかと私は思います。

 「面従腹背」の後半は、加計学園問題についての特別座談会となっており、元文部官僚で総合学習等を推進した寺脇研氏、毎日新聞特別編集委員の倉重篤郎氏が対談に加わっています。これを読み、加計孝太郎の獣医学部を利用しての金儲けに安倍政権が理不尽なやり方で大学設置を押し通したことがよくわかりました。


 


by good_natsu | 2019-01-10 21:43 | 読書 | Comments(0)

 2018年、74才です。取り敢えず11年、85才までブログを続けたいなあ。残り少ない人生、しっかりと考えた発言をしたい。


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